2人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
「えいっ」
「ふわっ!?」
突然目元に、ひやっとした感覚が。
変な声を出しながら身を引くと、そこには、
「ふふ、びっくりした?」
はにかむ愛花さんがいた。彼女の今日の格好は、いつも高校で見慣れてる制服でなく、ハイネックのロングシャツに白いパーカー、そしてホットパンツと、見事僕のテンションメーターをぶっこわしてくれるものだった。
そんな視線に気づいた彼女は、薄桃色の両頬にぺたぺた触れる。
「ん、どっかになんかついてる?」
「え、ああ、いや、別に」愛らしい顔が付いてます。なんて言えません。
特に二重と長いまつげのコンボがっ、と僕が脳内で熱弁していると、愛花さんはふと思いついたように、
「あ、そうだ」
「ん?」
「デートなんだから……」
すると愛花さんは一旦今きた道を引き返し、そしてまたこちらへ接近。そして、
「こほん、『あ、待った?』」
棒読みっぽく、訊いてくる。ああ、そういうことか、と僕は納得し、返答。
「『あ、ううん、今きたとこ』」
そういえば前、一度言ってみたいとか言ってたもんな、デートの常套句。
どうやらさっきの僕の返答に満足したらしく、愛花さんは笑顔で僕の腕を引いた。
「じゃあ、行こっか」
「あ、うん」
上機嫌に鼻歌を歌い出す愛花さん。
いや、街中にいたら蹴り飛ばしたくなるよね、こんな二人。
それでも、顔がほころぶのは止められなかった。
最初のコメントを投稿しよう!