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子供達のはしゃぐ声が大きな音になって耳に飛び込んで来た。
見れば、利一と茗が転げ回っている。
利一は今年で四歳になった。
五体満足に生まれ、身内部にも異常なく。
生まれた時は、いつ死んでもおかしくないと思っていたのに。
その利一が今、目の前で元気に。
「茗は、大丈夫なのか?」
その問いに。
弾かれたように、昭如は耕史を見た。
瞬間、耕史の中に嫌な予感が走った。
何か…。
そう、考えるまでもない事だ。
何かない方がおかしいじゃないか。
利一と茗じゃ、生まれた環境も育った環境もまるで違う。
何故なら、耕史は選ばれた人間。
利一は、選ばれた人間の血を受け継ぐ、子供。
全て整えられた、外敵から守られた場所で育てられた。
ここに来るのだって、本当なら許可をいくつも取らないと…。
取らないと…?
フッと零れた笑み。
自虐的な、笑い。
取れるはずがない。
俺の、子供、だから…。
「耕史?」
苦しい笑いを浮かべ、頭を抱えてしまった彼に。
「茗は、大丈夫だよ」
昭如が言った。
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