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そっと添えられるように触れた昭如の手が冷たくて。
思わず耕史はその手を掴んだ。
自分より遥かに細く白い手、腕。
こんなんで本当にあの子を育てたのか?
思いながら、茗に目をやる。
「本当に、お前が…」
茗に目を向けたまま言う耕史から、昭如はスルリと手を引く。
「茗は、強い子だから」
そう言った昭如の言葉を、耕史はそのまま受け止めはしたものの。
やはり不安や疑問は拭えない。
それに一番気掛かりなのは。
「もし、茗の存在が知れれば…。女は貴重だ。政府の奴らが…」
「男だよっ」
昭如が遮った。
いつもおっとりで、物静かな昭如に比べたら強い口調。
驚いて、けれど驚いたもう一つの理由。
開きかけた耕史に。
「茗は男の子だよ。間違えないで」
口調はいつもと同じおっとりとしていたけど。
目は力強く耕史を射ていた。
だから、耕史は言葉を飲み込んだ。
深い疑問を抱えたまま。
茗は、昭如によく似ている。
だから茗も女の子に見える。
けれど、茗は…。
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