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六年前。
昭如は突然姿を消した。
そして三年前。
再会した昭如は。
茗を連れていた。
『僕の子だよ…』
愛しそうに抱いて、昭如は言った。
誰との?
その疑問は今も残ったまま。
茗の出生については、昭如は頑なに閉ざしたまま。
『僕の命より大切』
そう言った昭如には、嘘はない。
自分を投げ出しても茗を守る。
自分の知らない昭如を、その時見た。
でも、まだ小さく、懸命に呼吸をする茗は。
明らかに女だった。
確かに、その時は『僕の子』しか言わなかったけれど。
俺の思い込みだったのか?
思い出を目の前に浮かべて耕史は思う。
「泊まっていくでしょ?」
思考の隙間に入り込んできた昭如の声に、我に返る。
目の前には、笑顔の昭如がいる。
その時、慌ただしい足音がして。
利一と茗が駆け込んで来た。
「めい、リィーチとねるー!」
「お前は寝相悪いだろ!」
子供達の賑やかな会話。
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