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「よく~わかんな~い」
大きな目をさらに大きくして、茗(メイ)は父親の昭如(アキユキ)の顔を覗き込んだ。
父親といっても、まだ少年にしか見えない昭如は。
じぃっと自分を見つめる茗を見て吹き出した。
「茗、そんなに僕の顔覗き込んでも見えないよ」
「ど~して?だってみたんでしょ~?」
首を傾げて自分を見つめる、その幼い問いに。
昭如に、ふっと淋しさが通り過ぎた。
力強く、だけど優しく茗を抱きしめる。
「時間はね、戻らないから過去と言うんだよ」
「…?」
「記憶はね、その人の心の中にだけ映るモノだから…見せたり出来ないんだよ」
「……?」
キョトンとして茗は聞いてる風だけど…。
「ごめんね、茗にはまだ難しかったね」
腕を解いて、茗と視線を合わせて。
優しく微笑む。
愛しい茗。
何よりも大切な茗。
自然と涙が溢れる。
この子だけは、手放したくない。
いつまでもこのままで。
ずっと一緒に…。
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