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「こぼれちゃうよ」
小さな手が、昭如の頬にふれた。
同時に涙が…。
「あっ」
昭如の涙がこぼれないように押さえようとして。
でもこぼれてしまった涙に、茗は俯いてしまう。
小さな体が震えて、ポタポタ涙が落ちていく。
また、泣かせてしまった。
昭如は自分が弱い事を知っている。
「ごめんね、ごめんね茗。僕、もう泣かないから」
涙を拭って茗を抱きしめる。
優しく背中を叩いて。
“ごめんね”と“大丈夫”を呪文のように繰り返す。
だけど茗は。
「ごめ…なさい…めいがわか…ないから…」
泣きながら、途切れながら茗は言う。
いつもこんな思いをさせてしまう。
こんなに小さいのに。
いろんな事、いっぱい我慢して。
強くならなきゃ。
茗のために。
「めい…わかるように、なるからはやく…」
顔をあげて昭如を見る。
だから待ってて。
茗の目が、そう言ってるように思えて、昭如は笑顔になる。
大好きな父親が元気を戻したのがうれしくて。
顔をクシャクシャにして。
茗は昭如に抱きついた。
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