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その姿を見とめ、昭如は立ち上がると同時に駆け出した。
けど、つまづき、その場に倒れ込んでしまった。
そんな昭如に影は近づき、腕を取る。
「久しぶりだな、昭如」
「耕史っ」
その影・耕史の力を借りて立ち上がり、昭如は彼に抱きついた。
「相変わらず細いな」
そう言った耕史に昭如は笑う。
「相変わらず格好いいね」
少し癖のある黒髪の耕史に対し、茶色かかった癖のない昭如の髪。
男らしい体つきの耕史に対し、女のような体つきの昭如。
対象的な二人。
「何もなかったか?」
今まで。
その言葉を省き、昭如の髪をクシャクシャに撫でて言う。
体つきだけじゃなく、顔もどちらかと言ったら女よりの昭如をずっと心配していた。
この荒れた時代。
こんな細い体で。
こんな人里離れた山奥で。
一人で子供を育てられるわけない。
もしかしたら。
もう死んでるかもしれない。
耕史はそう思っていた。
思いながらここに来た。
なのに。
生きていた。
昭如だけじゃなく、茗までも。
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