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全て夢だったのだろうか。
いや、そんな訳ない。
だって、私は愛していた。
彼のことを確かに愛していたのだから。
――
手にかかる水が心地良い。
赤いシミが中々落ちなくて、あたしは手を止めた。
彼がいた証拠を、消そうとしていることに気がつく。
今は、彼の存在も消えればいいと思っている。
何故か。
彼はあたしの中で
愛しい存在だった。
そして同時に、恐ろしい存在だった。
あたしはいつも怯えていた。
怖かった、消えてしまいそうな彼が。
だから良かったのかもしれない。
消えてくれたほうが、いっそ楽だった、なんて。
――
手放せない薬のように
私は依存していた。
愛と依存は何が違うのだろう。
たいして差などないと思う。
リンスとトリートメント、みたいな
そんなどうでもいいくらいの違い なんだろう。
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