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「まあいい。今日は色々ミスもしてしまったが、結果的には数名の能力者と会うことができた。特に梨亜からの心象が悪くなかったのは大きいな。これから色々と動きやすくなる」
独り言を呟き、マイク付きヘッドフォンをパソコンに繋げる。
そして通信画面を開くと、はっきりとした口調で、マイクに向かって語り出した。
「こちら木戸秀一。イレギュラーもありましたが、無事に侵入成功。今までに接触した能力者は六名。うち一名は我々の把握していない人物です。……ええ、何でも兎小屋に……」
今までに起こった出来事全てを、かいつまんで話す秀一。
それが終わる頃にはタバコもすっかり灰に変わっていた。
「よし。報告完了だ」
ふう、と息を吐いてパソコンを閉じる。
そしておもむろに次のタバコに火を付けながら、秀一は今日出会った少女達のことを考えていた。
「……悪く思うなよ。俺達にはお前達の情報が必要なんだ。イーターが、外の世界を蹂躙する前に……」
秀一が小さく呟いて、窓の外を眺める。
彼が見据えるのは、はるか遠くにそびえ立つ赤茶けた壁。
四方を囲むその壁こそが、秀一の住む世界と少女達が住む世界の境界線だった。
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