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「さて……と」
報告や資料作成などの細かい仕事を終えた秀一は、そのままゆっくりと立ち上がった。
望花からの命令では学則を読んでおけとのことだったが、秀一には他にやるべきことがあった。
一応、シャツの襟元を正して部屋を出る。
向かう先は、ショッピングモールだった。
「授業は終わったようだな……」
寮を出れば、私服に着替えた学生達の姿がチラホラ見られる。
その中に見覚えのある顔を見つけ、秀一は思わず呼び止めた。
「お、由梨じゃないか!」
「あ、先生!」
手を振る秀一の下へ、由梨がパタパタと走ってくる。
しかしその姿が近づくにつれ、秀一の表情が曇っていった。
「どうも! さっきぶりです! そろそろみんな授業が終わったかなーって思って……」
「あ、ああ……」
何やら言葉を濁す秀一を、由梨が不思議そうに見つめる。
「どうしたんですか、先生。何かこう、うようよ~って感じの顔になってますよ」
「ああ、いや、由梨……お前、その服どうしたんだ?」
秀一の質問に、由梨は自分の服を眺めたり、何やらクルリと回ったりして、アピールを始める。
「ああ、分かります? この前凄く可愛いの見つけちゃったんですよ! どうですか? 何かこう、ぴゅるぴゅる~って感じで可愛くないですか?」
「いや、正直……無理だな」
「ふええええっ!? ど、どこかおかしいですかっ!?」
「ああ、そのショッキングピンクに〝アイアムお洒落ing〟とか訳のわからないロゴが入ってるTシャツも、何を考えて配色したのか分からない緑と黄色のストライプミニスカートも、カジュアルな服装に全く合わないおっさん臭い白無地ソックスも、何故それを選んだのか意図が掴めない茶色のローファーも、全てがダメだ。ダメダメだ! 0点じゃボケエ!」
「はわわわっ!?」
秀一の辛辣なダメ出しに、由梨が涙目で仰け反った。
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