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目の前に容赦なく迫る〝死〟の恐怖に、叶絵はただただ涙を流しながら、かぶりを振っていた。
まるで脳みそを洗濯機の中にでもぶち込まれたかのように、様々な考えがぐるぐる回って絡み付く。
この場を切り抜ける方法など手繰り寄せることが出来ぬまま、叶絵は、同じように震えながら寄り添う友人の手をギュッと握りしめていた。
勿論、叶絵がこの事態を全く予想出来なかったわけではない。
だが、叶絵の中に少しの油断が生じていたのは紛れも無い事実であった。
しかし、それも無理からぬことなのだ。
なにせ、ここ数週間程は、驚くほどに平和な学園生活が続いていたのだから。
そうでなければ、図書委員の友人に付き合って、こんな時間まで図書室の資料整理を手伝ったりなど、決してするはずが無かった。
微かな月明かりが、巨大な存在によって遮断され、二人を漆黒の影が包む。
感情の灯っていない瞳で二人を見下ろす巨大なミミズのような生物。
それは圧倒的な捕食者。
〝イーター〟であった。
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