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ネットで知り合った女と渋谷ハチ公前で待ち合わせた。
現れたのは全身チェックのデブス。
今流行のマキシとかではなく、昔からお気に入りで履いてるような、ただただ野暮ったいチェックのロンスカ。それをずるずると引きずって歩く様は、マツコなんちゃらを思わせる。
ご丁寧にカバンから何から薄汚れたチェック。
今流行のマドラスチェックとかではなく、一昔も二昔も前のようなレトロ感漂う、メンヘラ臭いデブ。こいつも精神科通ってそう。
外れか。仕方ない。こんな日もある。
一緒に歩くのも恥ずかしいが、穴が開いてりゃの精神で。
勿論、二度目はないが。
ホテルに行く前に茶店に寄る。
可愛い子なら、よく行くちょっと洒落たレストランに寄っても良かったんだが、こいつなら茶店で充分だ。
奢りとばかりに豚食いされて、俺に全額請求されても困るしな。こいつ無職っぽいし。
デブスは終始、無言だった。あまり男慣れしてないんだろう。ひょっとしたら、人慣れすらしてないのかもしれん。普段日光を浴びてないような、青白い肌に目をやる。
あまり一目につかないよう、なるたけ人に会わないよう、周囲を気にしながら、ホテルに入る。
肩を抱き寄せた瞬間、デブスが震えたような気がした。構わず部屋に入れ、シャワーを浴びた。
出ると女は錠剤を飲んでいた。
『シャワー浴びないの?』
なるたけ優しく声をかけた。
てか浴びろよ豚。艶のない黒髪、毛玉ついて何日も洗ってないかのよーな小汚い服、曇った眼鏡、何より全身脂肪で、清潔感ゼロなんだからよ、お前は。他でもなく俺の為に浴びてこい。
デブスは動こうとしなかった。
苛々して舌打ちしたいのをこらえ、優しくしようとしたが、もはや限界だった。
『…早く浴びろよ豚』
思わず悪態が口をついた。
『何で動かねんだよ豚。さっさと浴びろよ!聞こえねーのか!?豚が』
怒りに任せて髪をひっ掴むと、巨体をベッドから床にたたきつけ、引きずり回した。
めくれた上着から、青白い下ッ腹が覗いた。醜さに殺意が沸く。
思い切り蹴りつける。
グヘッと間抜けな呻き声を漏らす。
この豚とやろうとしてた自分にも、怒りが沸く。怒りに任せて蹴り続ける。
『テメー何で来てんだよ?ああ?どの面下げて来たかって聞・い・て・ん・だよ!』
動かなくなった。
ヤバい、殺したか?
我に返ると怖くなった。ひとまず落ち着かせる為、煙草を吸う。
動かない豚をそのままにして部屋を出た。
…今日は厄日だ
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