†第二章†

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よかったな Kさんという女性が、同じ大学の女友達のMさんのアパートで遅くまで遊んでいた。 NさんはSさんに「今日は泊まっていきなよ」と薦めたが、Sさんはそれを断って自分の家へ帰る事にした。 ところが、もう少しで家につくという時に、SさんはNさんの部屋に携帯電話を忘れた事に気が付いた。 仕方なくSさんは来た道を引き返してNさんのアパートへ戻った。 外から見たら部屋の電気は消えており、もうNさんは寝ているようだった。 Sさんは部屋の前まで来たものの、Nさんを起こす事をためらい、どうしようかと迷っていた。 しかし、Sさんが何気なくドアノブを握ると、何故か部屋の鍵はかかっておらず、Sさんはそっと中へ入った。 部屋の中は暗かったが、かすかな光が部屋の中に置き忘れていたSさんの携帯に反射しているのが見えた為、Sさんは部屋の電気をつけずに部屋を横切って携帯を取ろうとした。 その時、Sさんは部屋で寝ているNさんの足をうっかり踏んでしまった。 しかし、Nさんは起きてくる気配はなく、そのまま横になっていた。 Sさんは小さい声で「ごめんね。じゃ、また明日ね」と声をかけてNさんの部屋を後にした。 翌日、SさんがNさんの家に行くと、そこには警察やTV局の取材記者が集まっていた。 なんでも、昨晩、強盗がNさんの家に侵入し、寝ているNさんを殺したというのだった。 Sさんは部屋の鍵が開けっぱなしだったのを思い出し 「あの時、躊躇せずに部屋の電気をつけてNさんを起こして部屋の鍵をかけさせておけば」 と、しばらくの間、後悔の念に苛まれた。 その後、Sさんは警察の事情聴取に呼ばれた。 Sさんは犯人がNさんを殺した後に残していったというメモを見せられた。 そこにはNさんのものと思われる血で、こう書かれていた。   『でんきつけなくてよかったな』          END
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