†第三章†

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よかったのに 何人かのグループでレンタカーにのって、山道を大騒ぎしながら走っていました。 やがて車はカーブにさしかかりました。 その時、車内のメンバーの内の一人が言い出しました。 「今、誰か……『死ぬよ』って言った?」 皆騒いでいたので、聞こえなかった、空耳じゃ無いの?などと言い合ううち、車はまたカーブにさしかかります。 今度はメンバーのうち2、3人が「死ぬよ」という声を耳にしました。 車内は騒然となり、やがて次のカーブでは皆静かにして、声がするかどうか全員で確かめよう、と言う事になりました。 そして3度目のカーブで、今度は全員の耳にはっきりと、「死ぬ よ」という声が聞こえました。 彼等は真剣になり、これはおそらく何かあるに違いない。 この先を進むのは危険だ。と言う事になりました。 車を止めてどうしようかと相談しているうちに、山の上から人が降りてきました。 話を聞くと、たった今山の上でがけ崩れの大事故があり、幾つかの車が巻き込まれて死者が出た。 その人は何とか助かったのでふもとに知らせるために降りてきたと言うのです。 事故の合った正確な時刻を聞くと、それは彼等が車を止めずにそのまま山を登っていたならば巻き込まれていたであろう時刻でした。 彼等は「あのカーブの声が警告してくれなかったら、俺達は死んでいた。 今から逃げてきた人を乗せてふもとに向かう時に、カーブを通る時にあの声の主にお礼をいいながら行こう」と言い合いました。 一つめのカーブを通り過ぎながら、全員で手をあわせ、声を揃えて 「有難うございました」 と唱和します。 次のカーブでも同じようにしました。 最初にまがったカーブで手をあわせ、 「有難うございました」 と言った時です。 最初の声と同じ声が、憎々しげに言うのが聞こえたそうです。 「死ねば良かったのに」 と。          END
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