284人が本棚に入れています
本棚に追加
/303ページ
きてるよ
ある男の話
男が住んでいた町に廃墟があった。
2階建てのアパートのような建物で、壁がコンクリートでできていた。
ガラスがほとんど割れており、壁も汚れてボロボロだった。
地元の人間でも、あまりこの廃墟に近づくことはなかったらしい。
ある日男は、友人と肝試しをすることになり、この廃墟に行くことになった。
まだ明るかったため、建物の2階まで上がって建物を探索した。
探索していると、あるところに並んでいる扉があり、そのひとつに、文字が書いてあるものがあった。
友人と近づいて確認してみると、扉の前に
「わたしは このさきの へやに いるよ」
と書いてあった。
男と友人は扉を開けて中に入り、先に進むことにした。
歩いて行くと分かれ道に突き当たり 、壁に
「わたしは ひだり に いるよ」
と、書いてあった。
少し怖くなったけれど、男と友人はそのまま左に進むことにした。
すると、両側に部屋がある場所に突き当たり、壁に
「あたまは ひだり からだは みぎ」
と書いてあった。
友人はこれを見た瞬間に、半狂乱になって逃げだしてしまった。
でも男はその場所にとどまり、勇気を出して右の部屋に行くことにした。
部屋に入り進んでいくと、突き当たりの壁に
「わたしの からだは このしたにいるよ」
と書いてあった。
下を見ると
「ひだりの へやから わたしの あたまが きてるよ うしろ みないでね」
男は、急いでその部屋の窓から飛び降りて逃げた。
それからは、もうその場所には近づいていない。
END
最初のコメントを投稿しよう!