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プロローグ『日常的な非日常』
――商業都市バン・フィ。
山々に分け隔てられた国境周辺にある唯一の平地、リヒテンツヴァイ王国に属する大都市。隣接する国々に欠かせない貿易路の出入口として栄えている。
様々な種族が集まり、珍しい品々を手にする事ができる国一番の商業拠点。王都以上に賑やかで華やかと、その名は近隣諸国まで広がるほど有名だった。
……だが、それは表向きの話でしかない。
多くの人や物の集まる場所には、どうしても好ましくないモノまで引き寄せてしまう。
例えば……そう例えばの話だが、東から西へ国際上で取り扱いが禁止された品々の密輸入出。他には、西から東へ国外に逃亡する犯罪者たち。
これら大小様々ではあるが、多くの闇が都市の至るところで病的に蔓延っている。そういったモノを取り締まるのは、都市に配備されている兵士や自警団の仕事だった。しかし、昼夜を問わず何十何百と多発する事件の中には、とても彼らだけでは手に負えないモノや明るみに出せないモノも絡んでくる。
そういった厄介事に対して、そうした荒事を専門に扱う者たちが居た。
受けた依頼は、兵士や自警団以上に豊富な経験と技術で完遂し、実績を上げる何でも屋。しかし、その分リスクは高い。
そんな一歩間違えれば死へと繋がる命知らずの男達に混じって、徐々に実力と実績を積み上げ一目置かれるようになるコンビが居た。
この物語は、そんな二人がコンビを組んで間もない頃の事件簿である。
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