第四章『狙われているマシュー』

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 その場所へ気付かない1体が爪先を引っ掛けて躓くと、数体を巻き添えにしながら倒れた。  すると、先程受け流した1体目が姿勢を建て直して、再び襲い掛かってきたのをナイフで受け止める。  鍔迫り合いをする中、倒れている木人形を飛び越えて数体が上から来るのが視界の端で捉えた。銃で反撃をするにしても、この状態では狙うのは厳しい。  実際、狙うのはそう難しくはない。ただ反動を流しきれず、自身が後ろにひっくり返る可能性が大きいかった。  だから、均衡していたナイフの角度を変えると、降り掛かる木人形たちに向けて、対峙していた木人形をぶつけ迎撃する。そして、残っていた木人形に向けて残弾で牽制した。  この時、犯すはずのない重大なミスを、自ら犯していた事にレーラは気がついていなかった。  怯んだ隙にシリンダーを横へ振り出して、素早く空薬莢を排莢。そして、奏から貰った弾丸を装填しようとした時だった。  背後で風切り音がした。 「えっ?」  思わず振り返ると、いつの間にか別の木人形の姿が。  全ての弾を撃ちつくした時点で、地面に倒れていた木人形は”9体”だけだった。この1体だけ目視すらできていなかった。
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