第四章『狙われているマシュー』

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 振り向かず前を見たまま奏は言葉を返す。  そういった所を考えていてくれた事に感動するが、 「それはいいんですけど、どうして今なんですか?」  これを聞かずには居られなかった。  だが、それを奏は答えない。  確かに、マシューの言いたい事は分る。何せ……折角、仕事も終わってゆっくりティータイムをし始めた所を、こうして強引に誘い出したのだ。こうなるのは、誘った本人である自分でも分っている。だが、どうしても“彼を1人で事務所に残して”は置けなかった。 「何か言って下さいよぉ、奏さぁ~ん」  後ろからの嘆願する声を聞き流しながら、1階に立ち共用玄関を抜けて外へと出る。  明るすぎる日の光に視界を遮られたが、それも一瞬で扉を開けた先には上から見えていた人物が変わらず立っていた。
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