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それに答えるようにヴァイナモは、右手で剣の柄を握ると勢いよく抜き放つ。鈍く光らせる両刃の刀身を、ゆっくりと両手で正眼に構えて臨戦態勢を整えた。
睨み合う中、内心、苦笑する奏。
さっきまで何も感じなかったのだが、今はヴァイナモから冷たく鋭利な殺気がヒシヒシと伝わって来た。出来る事なら、この雰囲気で抜きたくはない。久方ぶりの出来る相手に、鯉口を切ろうか指先に迷いが生じる。
なかなか動こうとしない奏に、
「どうした……抜け、宮下 奏」
目を細めながらヴァイナモは短く告げた。
まるで、それが呪文か何かのように名前を呼ばれた途端、気が付いたら鞘走りの音と共に九字兼定を抜いていた。これで、もう鞘には戻せない。だから、刀身を右斜めにした変型の正眼で構えながら、出方を待つか先制するか高速で思考する。
だが、たった一瞬の隙を突かれてヴァイナモが先に動いた。
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