第四章『狙われているマシュー』

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 手応えで『まだ』と感じ取った奏は振り返って、上から太刀で奇襲の如く斬り掛かる。しかし、それも防がれてしまう。  鍔迫り合いの中、この姿勢を維持するのにギリギリな奏。それに対して、余裕のある笑みをヴァイナモは見せていた。このままでは負けると判断した彼女は、刃を反らして逃げると間合いを取る。  すると、それ以上の追撃はなかった。  かなり分が悪い。  人を斬るという点から言えば、剣よりも鋭利な太刀の方が秀でている。だが、この長所が仇となる事もあった。優れた刃物というのは、刃を鋭利に研き上げる必要がある。そして、研けば研くほど刃は脆くなってしまう。  対して、鎧や甲冑を着て戦う西方側の騎士たちは、発展するにつれて硬く堅牢になる防具の上から、生身にダメージを与える必要があった。それらに対抗するため、繋ぎ目などを貫けるよう切先は鋭利だが、切れ味を二の次に頑丈さを追求され今の形となった剣。  刀は質実剛健で全般的に優秀だが、今回のように単純な打ち合いをすれば剣に及ばない。
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