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振り下ろした先に誰の姿はなく、主を失くした剣だけが地面に転がっている。
姿勢を戻して視線を上げると、5歩ほど離れた場所にヴァイナモの姿はあった。
まさか、避けられるとは思っていなかったが、もう驚く事はしない。それが敵にとって当たり前なのだと理解する。
見た限り、剣以外に武器を持っているようには思えなかったが、とりあえず太刀でいつでも斬りかかれる体勢は整えておく。
視線を交し合う中、思い出したかのようにヴァイナモが口を開いた。
「……あの一撃は、鉄をも切り裂くはずなのに平気なんだ、宮下 奏?」
「この鞘は、特別製でな。……ある国の工業都市で創った鋼鉄の鞘なんだ」
「成る程……どうやら俺は、少しばかりお前を見くびっていた様だぜ」
してやったり顔の奏とは違い、自嘲するかのように彼は笑った。そして、
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