第四章『狙われているマシュー』

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 そんな事を考えながら痛みが引くのを待つ。 「奏さん! 奏さん!?」  何度も呼ばれて頭を上げると、顔をクシャクシャにしながらマシューが駆け寄ってきたのが見えた。 「どうした、マシュー殿」 「大丈夫なんですか、奏さん!?」 「あぁ。まだ痛むが……まぁ、大丈夫だ」 「ボクには、全然大丈夫には見えませんよ!」 「……そうか」  ハハッと空元気で笑ってから言葉を続ける。 「それで、マシュー殿は……へいき、か?」 「えぇ。奏さんが護ってくれましたから」  目尻に浮かぶ涙をマシューは手の甲で拭った。そして、奏の腕を自分の肩へと回した。 「とりあえず、事務所に入りましょう。傷の手当もしないと……ですから、しっかりボクに掴まって下さい」
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