プロローグ『日常的な非日常』

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 それを拒絶しながら、左腕で後ろから抱くように拘束していた“少女”の首元にナイフを突きつける。  なぜ、少女がいるのかといえば……逃げ切れないと判断した男が、道の真ん中で偶然視界に入ったアッシュブロンドの緩い三つ編みの後姿を人質に取ったからだ。  ――が、この少女の見た目は十代前半。  この時間帯の歓楽街を歩いているには不自然だと思えたが、少女の予測できる年代ならば反抗期に入っているだろうし、こういった場所に興味のある年頃だ。  家を抜け出して、今日たまたま歩いていただけ。そう解釈できる。そして、これはチャンスだろうと同時に考えた。  子供が人質なら、大抵の奴は手出しは出来ない。 「お前、何なんだよ! どう見てもお前、自警団の人間じゃないだろう! どうして、俺を捕まえようとする!?」 「ふむ。……何、簡単な事だ。拙者は、その自警団とやらに雇われているのだからな」 「くっ、やっぱり“ギルドの人間”か」  それを聞いた彼は忌々しげに吐き棄てた。 「確かに主が言うように、一応ギルドの所属にはなるだろうな。だが、拙者は個人経営の下っ端だがな」
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