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あれから、六年が経った。
セリムは14歳になり、あの時のクロネコと同じ位になるだろうか。
そして、今日は……。
セリムはカバンに必要最低限の物を詰め込んでいく。
着替え、お金、そして写真。
セリムは写真と手に取り、懐かしげに眺めた。
写真には父と母、そして自分がその真ん中に立っていた。
自分がまだ幼い頃の写真だ。
笑顔、笑顔、笑顔。
みんな幸せそうな顔をしている。
父は戦場で散り、母は病で亡くなった。
今まで育ててくれたのは宿屋のカーネルさん。
だから、両親の事はあまり覚えていない。
カーネルさんが、自分の親も同然だった。
「お礼……言っとかなきゃ」
セリムは大事に写真をしまうと、護身用の短剣を脇にさす。
その表情は引き締まり、内なる決意を感じさせた。
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