六年前の約束

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「あいつは……レイドは死ぬ前日に言ったんだ。“もしお前が生き残ったら、息子に渡してくれ”ってな」 「父さん……」 セリムは手の石を見つめた。 「スカイビリオンって名前らしい。幸福の石なんだと」 「スカイ……ビリオン」 ふと、脳裏を何かがよぎる。 それが何なのかはわからなかったが。 「……みんなには、いいのか?」 セリムは石を内ポケットにしまうと、無言で頷く。 「この街……いや、世界中でもクロネコを好ましいと思う人はいないと思う」 「なら、なんで……」 「目標が出来たから。目標にしたい人がいたから……」 「……そうか。なら、もう止めない。それに、大事な息子の決意に水を差したらあいつらに怒られちまう」 カーネルは苦笑いを浮かべながら上を指差した。
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