その名はクロネコ

2/15
前へ
/96ページ
次へ
小さな明かりが点々と灯り、小さな町は夜を照らしていた。 町は静けさに包まれ、人の姿はほとんどない。 いるのは、1人の少年くらいだった。 「“ひげ”が……反応してる……」 銀髪の少年はぽつりと呟き、町の中に足を進める。 少年は何かを探しているようだった。 ミシュレット花屋、ジムのパン屋さん、服屋ロイン……。 どれも違う。 歩きまわって数十分……。 「あった!」 そこは小さな宿屋だった。 少年は宿屋の扉を開いた。 「いらっしゃい!」 同時に中から男性の威勢のいい声が出迎えた。 「お一人様かい?ん……、あんた見ない顔だな」 少年はドキッとし、視線を泳がせた。 尚も男性はまじまじと少年を見つめる。 「黒い服、黒い手袋、黒い靴……。あんた黒一色だな!」 「はい……」 「まるで、黒ね……」 言いかけて、男性は言葉を止めた。 再度、男性は少年を見つめる。 「あんた……もしかして、“アレ”か?」 少年は俯き、小さく頷いた。
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加