その名はクロネコ

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少年は宿屋の外へと突き飛ばされた。 「出ていってくれ!ここから、この町から!」 男性の声に、周りの家から何事かと人が出てくる。 「あんたらが来ると絶対不幸な事が起きるんだ!」 その言葉に反応し、周りの視線は一気に冷たいものへと変わる。 「この子が例の……?」 「何しに来たんだ……」 「勘弁してくれよ……」 冷たい言葉のひとつひとつが少年の心に突き刺さる。 トドメは男性の一言だった。 「ここはクロネコが来るような場所じゃねぇ!」 少年はすくっと立ち上がり、ゆっくりと歩きだす。 俯きながら、ただひたすらに歩く。 周りの視線が突き刺さる。 冷たい視線。 普段はみんないい人なのだろう。 しかし、クロネコにだけは違う……。 不幸を運ぶ者。 人はそう認識しているのだから……。
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