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少年は石橋の下に座っていた。
このまま帰るわけにはいかないのだ。
彼には仕事があるから……。
「ふぁあああ……」
大きなあくびが出る。
あれからどれくらい経っただろうか。
川を月が明るく照らしていた。
少年はじっと水面に映る月を見つめていた。
水面が揺れて歪む月。
しばらくすると、月は雲に隠れてしまった。
それと同時に……。
「来た」
少年は立ち上がり、軽い身のこなしで石橋の上へと上がる。
石橋の上からは町の様子が良く見えた。
町の明かりは消え、おそらくみんな寝ているのだろう。
少年は安心し、黒い革の手袋をはめる。
手の甲に紋章の描かれたそれは、不思議な力を感じさせた。
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