その名はクロネコ

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紋章は月の光に反応するかのようにほのかな光を帯びる。 「今日は、月が味方してくれるか……」 少年はゆっくりと歩き出し、夜闇の中へと消えていった。 「……ったく、クロネコなんて消えちまえってんだ……」 ぶつぶつとそんなことを呟く男性。 それは先程の宿屋の男性だった。 両手に大量のゴミを抱え、おぼつかない足取りでゴミ捨て場へと向かっていた。 ゴミ捨て場は近所で、歩いてもそんなに時間はかからない。 そこへ1日に出たゴミを運ぶのが最後の仕事だった。 「だいたい、クロネコが来たからって不幸なんかそうそう来ねぇっての」 では、なぜクロネコを嫌うのか。 理由は簡単。 周りがそうだからだ。
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