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「早く!」
その必死な形相に、男性は何も言えず宿屋まで追い返される。
「今日はもうここから一歩も出ないで下さいね!」
「な、何のことだよ……」
「僕なら、今夜にでも出ていきますから……」
「……………………」
「それでは」
少年は一礼し、宿屋を立ち去ろうとする。
「おい!」
男性の呼び掛けに、少年は驚いたように振り向いた。
「お前達って、何なんだ?」
すると、少年は微笑み答えた。
「不幸のクロネコですよ。では、おやすみなさい」
少年はそのまま夜の街へと消えていった。
「不幸のクロネコ……か」
男性は扉に鍵をかけ、自分も短い眠りについた。
最後に彼が見せた、寂しい微笑みを思い返しながら……。
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