赤鼻

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赤鼻

「さんたさんてがみよんでくれたかな?」  クリスマスの夜はなかなか寝付けなかったっけ。煙突が無いことが不安で窓を開けっ放していたら朝には閉まっていた。  今はサンタの正体は知っているが、それでもこの日は楽しみだった。今日のサンタは僕のはずだった。  ……だったんだ。 「バイバイ」  彼女のプレゼントは雪より冷たいその言葉。  フラれた理由は今の僕にはわからない。わかっているのはサンタがいるのかどうかと僕がフラれたってことくらい。  悲しくって泣き続けて、鼻水もかみまくった。  一人暮らしのアパートには僕一人だけど、誰かに赤い目尻と赤い鼻を見咎められるのが嫌で、窓を全開にしてみた。寒いからさと言い訳できるように。  もしかしたら僕にはまだ残っていたのかもしれない。サンタさんを無邪気に信じる気持ちのかけらが……。  サンタさんが来たらどうしようか?それだけならまだしも彼がトナカイに逃げられていたら? 「失礼、うちのトナカイがここに来ていないかね?なんだ、てっきり赤鼻が見えたもんだからうちのかと」  なんて言い出したら?  …………。  やっぱり、今日は窓は閉めないで寝てみよう。窓を閉めてくれる親はいないけど、うちには煙突が付いてないからね。
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