つまりの原因

31/35
前へ
/83ページ
次へ
  流石のざっちゃん、そこら辺抜かり無いわ、しみじみとそんな事を思いながら礼を言いへらりと笑った、のざっちゃんは「いいっての」と言ってから俺の頭をガシガシと荒く撫でると煙草を地面に押し付けて消してから吸い殻を作業着の胸ポケットに仕舞うと立ち上がった。 「ちょっと待っててくれるか、今持ってくっから」 「りょーかい、待ってるわー」 門の内側、要は敷地内の小さなプレハブ小屋に入っていった、外見はプレハブ小屋だが内装はバッチリでトイレ、バス付き、しかもユニットバスじゃないから羨ましいにも程がある。 けど掃除が苦手なのか綺麗な室内を見たことが無い、いいや、雑誌や漫画やDVDが散乱していてとても足の踏み場があるようには思えないが、のざっちゃんには分かるのかひょいひょいと進んで行ったのを見た時はただただ唖然としたものだ、今は慣れたから平気だけど。 「ほら、これでいいか? 一応今週入ったのも含め5話分入れといたけど」 「……流石のざっちゃんだわ、のざっちゃんがKY過ぎて俺泣いちゃいそう」 「なんでKYなんだよ」 「空気読めるって意味の方向でお願いします、淳美兄さん」 ムッとしたのざっちゃんの表情を見てから通常使われている意味とは違うことを伝えてニヤリと笑った、やっぱりのざっちゃんは弄り甲斐があるな。 「兄さんかよ、ってか淳美言うな、のざっちゃんでいいだろーがよ」 「えーなんでー」 「何回言わせりゃいいんだこの鳥頭……女っぽい名前だから呼ばれたくねーんだよ」 「鳥頭って酷くねー、ってか知っててしてるし」 「……おい糞ガキ、そんなにお前は俺にぶん殴られたいようだな、いい心掛けだ、そらそこに膝立ちして顔突き出せ、今なら往復ビンタで許してやる」 ヤバい、ちょいギレ状態にさせてしまった、名前の事は触れてはならないタブーで、たまにのざっちゃんをおちょくる為だけに言うが今回はどうやら虫の居所が悪いらしい……どーすっかな。 「どーどー、のざっちゃん落ち着いて……何かあったの?」 「……ッチ、別にどーもしねーよ、早く帰れ糞ガキ」 「ん、りょーかい、のざっちゃんも早く帰るんだよ」 「俺ん家はすぐそこだっつーの」 「わかってて言ってるんですー、んじゃねー」 俺が女装して荷物を取りに行っていた時にどうやら何か起こったらしいのか、のざっちゃんの眉間には大量のシワが寄せられていた。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1342人が本棚に入れています
本棚に追加