第二話 始まりは銃声と共に

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  「では? 例え、我々が同じ作戦区域で遭遇した場合、どうすれば?」 各務が先が見えたように聞く。伸宏も名取、否、名取二等特佐が何を言うのか分かっている様子。 「射殺しろ。我々は非公式の組織だ。"我々が悪いのではない"。"我々の前に何気なく転がり込んできた奴が悪い"。誰にも悟られる訳にはいかん。それが公安だろうが何だろうがだ」 と、非情な答えが返ってきた。 「了解」 各務はやはりという顔をして怪しく笑う。 伸宏達が、これから行う捜査は、今、ワイドショーで頻りに流し続けている『船橋潮見町連続銃乱射事件』だ。 この事件は、日本の犯罪歴史史上、最も最悪で前例が無い事件だった。そして日本の捜査方法、貿易輸入検査、ありとあらゆる管理体制が疑問視される重大事件だった。 犯人は複数人で構成されたグループで、必ず一人がアサルトライフルを持っているという情報がある。 使用したと思われる銃は、アメリカ軍を含めた西側諸国が使うM16系列のライフル。弾は5.56mmNATO弾。西側諸国で広く使用されているカービン弾だ。 日本は銃火器の取締が世界で最も厳しいとされる国だ。その国で大量のアサルトライフルが持ち込まれているという異常事態は、平和国家という信頼感の低下、セキュリティの問題、各運輸機関の武器密輸の疑惑浮上、という諸問題が生まれる。そして、それを用いた虐殺行為は大問題だ。 政府はこれら一連の事件をテロと断定、前代未聞の『不特定の犯行グループによる武装テロ』となった。1995年の地下鉄サリン事件の一般市民を対象とした化学テロとは違い、一般市民を対象とした武装テロ。それも一回ではなく断続的に数回発生している。 警視庁はある程度の調査をした。しかし結果は原形を留めない程の死体が出来上がるのみ。調査は捜査員の死体を量産するだけだった。 いくら拳銃使用許可命令が下りていても、相手は一個小隊規模のグループ。各警察署が配給しているミネベア製ニューナンブM60拳銃では太刀打ち出来ない。 今度はSAT(特殊急襲部隊)を導入を検討したが、彼等の任務は急襲作戦。つまり強行手段だ。彼らには捜査の手段は無い。  
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