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ケースをスクールバックにしまう。そのスクールバックを背負う。どうやら伸宏は弘樹からスクールバックを背負う事を習ったようだ。伸宏はそのまま真っ直ぐ昇降口へ向かう。
「昇降口……下駄箱……不思議な名前だ……」
昇降口に来た時、伸宏はそう呟いた。下駄箱から靴を取り出し、それを履く。そして外に出る。
夕焼け──否、夕焼けとは思えない、鮮血を空に撒き散らしたように空は赤い。
「……嫌な予感がする」
北畠 伸宏、謎の隠密特殊機関に所属する彼が、第6感を働かせたような事を呟いた。
あの茜色の空は無い。雲一つ無い空は、ここが地球という我が故郷ではないように見える。
ギュッ
伸宏が胸の部分を握る。中には、スイス製の拳銃「SIG SAUER P226R-TACTICAL」がしまわれていた。
周りには危険な存在が無いのに、伸宏は変に警戒している。『勘』なのだろう。その勘が働いて銃を取り出す仕草をしてしまう。
その時───
ギィ……
後ろの昇降口のドアが開いた。
「………!」
警戒していた伸宏がその音に素早く反応し、後ろを振り返る。振り返った先には、一人の女子生徒がいた。伸宏には見覚えがある女子生徒だった。その女子生徒は、伸宏が転入したクラスにいたクラスメイト『朝霞 未沙紀』だった。
「あっ!?」
伸宏の姿を見た未沙紀は驚く。
「北畠……伸宏くん……ですよね?」
未沙紀は恐る恐る聞く。
「確かに……俺は北畠 伸宏だ。お前は……お前の名前は、確か朝霞 未沙紀……だったか?」
「そうです、朝霞 未沙紀といいます。貴方の左後ろの席です」
と未沙紀は答えた。
朝霞と聞いた伸宏は、埼玉にある陸上自衛隊朝霞駐屯地の名前を思い出す。
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