第一話 不思議な転校生

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  今日は何故か最悪だ。高校生活最後の年に入ってから見てなかった夢を見たからだ。 ──最初の夢はあれか…… 俺は自分の事を未だに恨んでいる。そして、幼き頃の俺のことも…。ふと、あの夢に出てきた子供を思い出す。無機質で無表情、そして、子供がするような目付きではない、物事をモノとして見ないあの目…。 ──体、あれは誰なんだろう? 俺はそう思いながら、台所で今日の朝食のスクランブル・エッグを焼いている。気分が優れないのに、何故か腹が、いつもの朝のように悲鳴を上げている。つまりはエサを欲しがっているのだ。そして、それを受け入れる喉も、何故か青信号なのだ。つまりは喉が普通なのだ。さっき飲んだ牛乳がそれを証明した。 そう、いつもの俺だ。俺は、見事に良い色に焼けたスクランブル・エッグを、自分の後ろのテーブルの上にある洋皿にのせた。生焼け特有の黄色い汁を少しばかり垂らしながら出来上がった。そのスクランブル・エッグを中心として、焼けたトーストと箸をおいて、いつもの典型的な朝食が現れた。 「ふう…」 俺は少しばかり、ため息をつき、テーブルの下にある椅子を、自分のところまで引き出し、そこにドカッと座り込む。 「…いただきます」 俺は少し間を開けてから箸を取り、そして両手を合わせて、日本人がご飯を食べる前にやるあの「行い」をやった。何故だか知らないが。誰もいない、俺しかこの空間にいないのに、言ってしまった。行いをやった後は、すぐにスクランブル・エッグに箸が行く。 本来なら喉が通らないため、箸が、届くことはない筈なのだが、俺の箸は、まるで肉食獣が獲物に襲いかかるように行ってしまった。俺はスクランブル・エッグを口に運びながら、テレビのリモコンに手をかけ、スイッチを入れた。ブラウン菅のテレビがパチッという音と共に、どんどんと色をつけ始めた。映るは、いつもの朝のニュースだ。近年のイラク情勢や北朝鮮の拉致問題などが、ペラペラと映し出される。 ──関係ないや 俺は無責任にそう思った。そう思いながら、どんどんとスクランブル・エッグを口の中に放りこんでいく。まるで、そのニュースを聞きたくないように、無視するように食べた。  
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