第一章 深慮逡巡

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  かわした後、ヘルメットに付いたHMDで今の戦闘機をロックオンする。これは俺が敵に向かって振り向いただけでロックオンしてくれる先進的なシステムを持ったヘルメットだ。俺はその敵の方へ振り向き── 「Fox-2!」 真上にいる敵戦闘機にミサイルを発射した。AAM-5は推力偏向パドルで急速旋回。本来なら、急速旋回ではミサイルは遠心力に耐え切れずに、ポッキリ折れてしまうのだが、AAM-5は折れる事なく追跡を始めた。   俺は操縦桿を引き、ズームアップ急角度上昇で迎撃する。いくらミサイルを撃っても確実に当たる訳ではない。何処かで外れる可能性があるから、ミサイルが当たらなかった場合の近接戦闘(ドッグファイト)が出来るよう構える。 兵装スイッチをミサイルから機関砲に変える。相対距離がHMDの透明なアクリル樹脂板に表示される。先に撃ったミサイルは敵のフレアと敵の良いタイミングの回避で当たらなかった。 「Go gate(アフターバーナー点火)」 当たらなかったと分かったら直ぐアフターバーナーを噴かして接近。敵の後方危険地帯に入ろうとする。 しかし敵も必死、直ぐに視界から外れよう左右に振れる。敵は左90度バンク、ターン。振り切るつもりのようだ。逃がさない。俺は何時しか獣になっていた。 「Fox-3!」 ブゥゥゥゥッ!! 敵に向かって機関砲を発射。しかし敵戦闘機は東京湾に向かって降下し、これを回避。俺も同じようにターンオーバーで反転、急速降下する。手を緩める事なくピッタリと後ろに付く。海面スレスレを俺とホーネットが飛行。衝撃波で海水が跳ね、その水しぶきがパタパタと風防に付く。まるで雨の中を飛んでいるみたいだ。 操縦桿を小刻みに使って左へ擦れ、ホーネットが作る水しぶきを避けて後ろに着く。 「Fox-3」 トリガーを引いて25mm機関砲を発射する。だが、向こうは此方が機関砲を撃つことを読んでいたのか、右にバンクし、25mm機関砲弾の雨を紙一重で回避したのだ。当たらなかった弾は虚しく海面をバシャバシャと打ち付けただけだった。 「ちっ!! 外したかよ!!」 舌打ちした俺は機体を右にバンクさせ、右旋回してあの敵戦闘機を追う。右旋回しながら敵戦闘機を追い続けていると、目の前に東京の象徴である『レインボーブリッヂ』が見えてきた。  
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