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「戦争なんて、ゲームみたいに軽く考えていた……」
by 上総 真則
俺はいつ、空に憧れただろう。あの青い単色で塗られた絵のような場所に。
子供の頃、あの空へ向かって良く手を伸ばした。すぐに届くものだと思っていた。最初は踏み台。風呂の時、座る椅子を台代わりにして自分の身長を継ぎ足し、手を伸ばした。でも届かなかった。
届かないと知った俺。今度は段ボールで更に身長を高くする。隣で親父と、今は亡きお母さん。笑ってたっけ? 今でも良く覚えている。温かかった。
そして更に親父の肩に肩車して貰い、空に触ろうとした。アパートの屋上に上り、空に触ろうとした。屋上の給水塔に上り、空に触ろうとした。
でも、上っていっても登っていっても、空には触れない。まるで空が俺を嘲笑っているようだった。嫉妬が生まれた。嫉妬から俺は飛行機に乗ろうとした。今すぐに飛行機のパイロットになって空に触りたかった。しかし、それは夢だった。叶わなかった。
親父が戦闘機パイロットだっていうことにも憧れた。だが、叶わなかった。
ある日、俺は親父に会った。あの時、全く分からなかった「黒海戦争」から帰還し、豹変した父親に。
半ば無理矢理の形で戦闘機のパイロットになるための訓練をされた。それを教えたのは親父じゃなかった。知らない自衛隊の人間だった。
でも、俺にとっては運命の出会いだった。あの轟音と共に地面を蹴り、何不自由無く飛び回るあの荒鷲の姿と、そして俺が求めた空、空の向こうに行ける翼と。だが、隣には親父とお母さんはいなかった……
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