第一章・2 学校

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  ───── ───── 2005年 8月25日─── 結局何だかんだで俺は学校に行く羽目になった。別に高校なんざ義務教育の枠じゃないだろ? 自衛隊に入ってるし給料貰ってるし、飯だって食えるし。別に困る事はない。パイロットをクビにされた場合は別だが。 俺は今、私立校にいる。この学園は中等部と高等部というような私立の中でも馬鹿みたいな上品な学校のように1つに集約されている。何かエリート校に入ったようでやだなと思った。だが、そうではなかった。都心の私立のように腰パンはいるし、茶髪に染めてる奴はいるし、ミニスカはいるし。とにかく俺にとっては娑婆の領域の学校だった。前の千葉県立は酷かったが、ここ岐阜はまだ穏やかだった。 今日はこの学校の夏期休学から通常授業始めの日。二期制の高校ではありふれた授業スタートの日だった。小学校や中学校は始業式に当たる日だ。 「今日から、この学園で一緒に勉強する事になりました。上総 真則君です」 女の担任が俺をクラスの連中に紹介する。小学生の転校生を紹介するような言い方だ。 「上総 真則です。よろしくお願いします」 一応これだけは普通に少し微笑んで言っておこう。変な気を持たせる訳にはいかないから。雑だが、趣味も付け加えて言っておこう。取り合えず、趣味はギターが弾けます、とだけは言っておいた。 女子から黄色い声が上がり、男子からは「ヨロシクー!」とデカイ声で調子者が俺に向かって手を振る男もいる。 先公の指定された席に向かう。嗚呼、あそこだけ空席がある。後ろから三列目の席か、丁度良い場所だ。俺はそこまで歩く。そして席の隣に両肩に背負っていたスクールバックを落とすように置き、座った。付けていた缶バッチが金属製の机の足に当たり、金属音を立てる。 俺が席に着いたところで、黒板に書いた俺の名前を黒板消しで綺麗に消した。それも書いた後が見えなくなるまで。彼女の几帳面さが窺える。だが、自分の名前がああやって跡も残さず消すのに、不愉快を覚えた。 消した後、先公はホームルームを行い、プリントを配る。学園祭や今後の日程だ。下らないと思い、ばれないようにプリントをくしゃくしゃに丸めて机の奥に突っ込んだ。 周辺にいる生徒からは何やらヒソヒソ声が聞こえる。今のを見たのか? 初めはそう思った。 ──なるべく自重すっか。  
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