第一章 深慮逡巡

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   取りあえずレーダーを見たが花火みたいなノイズが所々走っていて駄目だった。レーダーのノイズを見た時、俺の勘が敵が近いと感じ取った。 吉田から三島、熱海上空に入る。目の前には黒煙を噴き上げる首都東京が見え、大地が黒ずんでいる。信じられない光景だ。 『オールプレインズ! セーフティ、オフ!』 「ラージャ! セーフティー、オフ!」 AWACSジャッジアイより指示。 素早くアーマメントマスター(火器管制)指示、マスターアーム(火器管制スイッチ)起動。HMD調整(照準器)、高度計調整。 ミサイルモード・ウェポンスイッチ3、AAM-4 99式空対空ミサイル、弾頭作動。 『エクザム、BVR AAM(目視外射程攻撃)はまだです。一斉攻撃です』 しかし、攻撃指示は出なかった。米軍のF-15Cと第304飛行隊(築城基地の飛行隊)のF-15Jとの同時攻撃をするつもりのようだ。   何時でもミサイルが発射出来るよう、指をトリガースイッチに置く。 『スタンバイAAM(ミサイル準備)!!』 「スタンバイAAM(ミサイル準備良し)!!」 ロックオンした。 一斉射撃は何時か、と正面を睨み、待つ? 春が先に見えてる季節。まだ手足がかじかむ頃だというのに、額から汗が流れ落ちる。 まだか? まだ来ないのか? 早くしないとあちらが先手を打ってくる。まだか? 徐々に指に力が入る。撃たれるという恐怖を俺は感じていた。 時間は? 腕時計を見て、指示を受けてからどれぐらい時間が経ったのか見てみる。 「なんてこった。30秒も経っていない……」 今か今かと待つ時間が5分たった感覚だった。だが、時計は時が止まっていたかのように30秒しか経っていない。 体内時計というものが狂ってきている。いつだ? いつ撃つんだ? 早くしろ。心がジャッジアイには聞こえない声で急かす。 ジャッジアイだけではない、俺の中で何かが俺という者を駆り立てる。何かは分からない。だが、俺を急かそうとしている。 『全機!! BVR AAM レディ!!』 来た。待っていたかのようにトリガーボタンを押した。 「Fox-1(中距離ミサイル発射)!!」 発射コールを言う。胴体ランチャーから『AAM-4 99式空対空誘導弾』全弾が発射された。  
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