第一章 深慮逡巡

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  松島三佐のF-15FJからも、山口と太白のXF-15JⅡからも、304飛行隊のF-15Jからも、アメリカ空軍のF-15CからもF-22Aからも次々とミサイルが発射される。 ミサイルの白煙が伸びていく。白い筋が空に描かれ、同時に青を俺の視界から消していく。幻想的な風景。俺は空の迷路に迷い込んだような錯覚を覚える。 だが、しかし─── ビィィィィィィィ!! 「───!!」 幻想からすぐ現実に戻る。ミサイルアラートがヘッドセットから煩く鳴り響いた。相手もミサイルを撃ったのだ。 俺は直ぐにチャフ・ディスペンサ・スイッチを押す。胴体下部のカートリッジからチャフという、ミサイルを錯乱させるアルミ箔が吹き出て雲を作る。それをローリング回転をしながらその雲を作り、パワーダイブ(急速降下)で降下する。 チャフを撒いてもミサイルアラートは鳴り止まない。まだか? まだか? バクバクと胸に手を当てなくても分かるぐらい、緊張で心臓が今にも弾け出そうな音を立てている。 降下を続けて10秒近く経った時、ミサイルアラートはハタリと止んだ。敵のミサイル攻撃を回避出来たのだ。俺はフウッと回避出来た事に一瞬だけ緊張を緩め、一息ついて軽くリラックスする。 しかし、全員がこれを回避出来た訳ではなかった。中距離ミサイルを喰らい、火だるまとなっていく機体はいた。回避したが、その火だるまになった味方機とぶつかる奴もいる。その光景を見た時、ああいう死に方はしたくないな、と思った。 この中距離ミサイルの後、戦闘機らしい戦い、戦闘機同士の近接戦闘『ドッグファイト』に突入する。 「ドロップタンク、アウター・センター・ゼッション」 軽い振動と共に主翼にぶら下がっていた外部燃料タンクのドロップタンクを切り離し、機体を軽量化する。 「タリィ・ホ(目視確認)、ボギー(国籍不明機)。エンゲージ(交戦)!」 目の前に敵の戦闘機が現れた。1秒2秒後に交差すると判断。敵戦闘機はアメリカ海軍が使用している戦闘機「F/A-18E スーパーホーネット」に似た機体。 「Fox-3(機関砲攻撃)!」 正面角度でガンアタック(機関砲攻撃)を仕掛ける。25mm機関砲が唸り、敵戦闘機にぶち込む。そしてバレルロールをして衝突を回避。幸い、敵の機関砲は当たらなかった。敵戦闘機は風防を貫通され、中にいたパイロットは頭を無くしてコックピットを血の桶にしていた。  
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