第一章 深慮逡巡

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  「まず一機!!」 有頂天になる。だが、気を変えなければならない。直ぐにレーダーが敵を補足。敵1機が上昇、二次レーダーに表示される敵の高度が3000から3500にカウントアップ。更に6時方向、後ろからこちらに攻撃レーダーを向け、接近する敵が1機。合計2機の敵が接近。やる気だ。俺は操縦捍を斜め右手前に引き、左ラダーペダルを押し込んでシャンデル(上昇反転)で反転し、反撃に出る。 「ターゲットインサイト!」 2機の敵の内の1機。上昇して此方に攻撃を仕掛けようとする敵に接近。あちらは、こちらより早くガンアタックをしかけ、先制。交差した後、急速反転のハイGターンで、再び攻撃に入る。 此方もスロットルを下げ、推力を絞り、同じハイGターンで旋回する。ギシギシと機体がGで軋み、イーグルⅡが悲鳴を上げているように聞こえる。不快感な悲鳴は俺の項を痙攣させ、集中力を紛らす。そんな中でも、俺は見事に敵の後ろを取った。 「ロックオン」 近距離ミサイル『AAM-5 04式空対空誘導弾』にセットする。まだ実戦配備されていない、新型ミサイルだ。 「Fox-2(近距離誘導弾発射)」 ブースタ点火。ランチャーからAAM-5が発射された。当たれよと祈る。 敵のホーネットは自分の囮であるフレアを撒き、これを回避しようとする。AAM-5は囮のフレアを誤認し、ふらついた。だが、AAM-5が再びロックオンして追尾を再開した。 『来る!?』 パイロットも気付いたようだ。またフレアを撒き、囮を作るが、遅かった。近接信管が作動し、爆発の衝撃波を受けた敵機は火を纏い、バラバラになって東京湾に落ちていく。 『ヴァイス4がやられた!! 畜生!!』 雑音に混じり、敵のパイロットの怒りの声が聞こえる。混線の中でもハッキリと、恐らくは近くにいる。その声の主だろう、RWR警戒装置が警報を出し、後方に敵機接近を知らせる。 「こなくそ!!」 崩れた言葉を吐き、左右スロットルをマックスレベルまで倒する。爆音が後ろのノズルから発生し、まるでロケットのように、『アフターバーナー(オーギュメンター)』の赤い炎が吹き出した。  
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