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脱出
時計の針は0時をとっくに周り、日を変えて現在午前4時。
辺りはまだ暗く人々が寝静まっている今、都会の喧騒はまるで聞こえない。
その静寂の中、五郎と男は身支度をし、脱出の準備を整えていた。
そして五郎は確認をした。
「それで、金は何処に隠してあるんだ?」
「行けばわかるさ」
「いいから言ってみろよ。事前に知っておけば頭の中で予定を立てやすいからな」
「あぁ、わかった。金は駅前のコインロッカーの中に隠してあるんだ。」
男は案外すんなりとお金の在処を五郎に教えた。既に二人の間には人質と犯人ではなく、完全に良きパートナーとでもいおう物が生まれていた。
そして五郎が宣言する。
「それじゃあこれから脱出を始める」
「待ってくれ」
五郎の言葉を遮って男が言葉を発する。
「どうした?」
五郎が尋ねると男は不思議そうに聞いてきた。
「お前何も持って出ないつもりなのか?」
そう、五郎はこれから逃亡するというのに何も持っていなかったのだ。
しかし五郎は落ち着いて男に説明する。
「逃亡する際に余計な物を持っていたら邪魔になるだけだろう。必要最低限なお金だけで十分だ」
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