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ちなみにこのあっさりさの理由は、割と頻繁に二人が会っている事に由来する。
「何だかなぁ」
断っても断ってもめげないテリーに辟易としていなくもないが、どうにも憎めない。
ふっと笑みを零しつつオーサーは魔道書を閉じると、小脇に抱えて自作のほったて小屋の中へと戻って行った。
◇ ◇ ◇
それから数刻過ぎた頃、コン……コンコン……と遠慮がちな、たどたどしいノックの音がオーサーの耳に入って来た。
戦に使われる事に嫌気が差し引きこもってから早数十年、テリー以外の訪問客は皆無。
しかしそのテリーとは会ったばかりだ。一体誰が、と、オーサーは首を傾げる。
趣味で薬を調合してみていた手を止め席を立つと、扉を形作る木の板と板の隙間から、何となく客の様子を探った。
しかし適当に作った扉だけあって、その隙間が大きい。相手とバッチリ目が合ってしまった。
「わ、私は怪しい者では」
これには客も狼狽した様で、思わずお約束の台詞を口走ってしまっている。
「怪しくないならどうぞ?」
オーサーは自ら扉を開けてやり、汚れた濃い茶のローブを纏った人物を部屋の中に招き入れた。
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