第一章

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 ただ考えなしに扉を開いた、という訳でもない。直感でだが、敵意がない事を感じ取ったからである。 「すまない」 「うん。ま、汚いけどその辺座って」 「ああ」  客はローブを取ると、金糸の刺繍が所々に入った、素人目にも判り易い高貴な衣裳に身を包んでいた。  オーサーとは対象的な銀の髪を少しの前髪を残して後ろに流しており、長めの襟足はちょろっと紐で結わえている。  しかし怪しい者ではないと言っていた客は、この大陸ウェリスに居てはいけない、人間の男性だった。まず間違いなく、テリーの言っていた密入国者だろう。  それは直ぐに解ったのだが、オーサーのしばらく眠っていた好奇心が、何故かむくむくと起き上がってしまっていたのである。 「君一人……じゃないか。お供は?」 「外で待たせている」 「で、君は誰? 何の用? 当然俺の事、解って来てるんだよね?」  矢継ぎ早なオーサーの質問に多少驚いた様だったが、男性は真っ直ぐオーサーを見つめ、真摯に応えた。 「私の名はユージーン・ディートバッハ・ディル・バール。貴殿……大魔法使いオーサー・イクシウス殿をずっと探していた。ようやく、ようやく会えた……!」
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