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「婚約の儀が正式に終わったその日の深夜に、事故と言うかその……大爆発が起こった。私もリンドから具体的に何があったのかは聞いていない、が……。妹の寝室だった場所から丸焦げの遺体が出てくれば、何となく想像が付く……」
「ああ、なるほどね」
オーサーは事情が見えて来た、と、ポンと手を打つ。こんな説明でも、どういった経緯の末ユージーンが自分を探しに来たのかがほぼ解った様だ。
「事故って魔力の暴走か。よっぽどそいつが気色悪かったんだろうねぇ。でもま、人間の間じゃ結構良くあるらしいじゃないの」
「そうなのか?」
「百年に一回とか」
「…………」
ユージーンは目の前のエルフとの時間の感覚の違いに一瞬気が遠くなった様だったが、何とか立て直す。
「しかし解っているのなら話は早い。何とかリンドに、強大な魔力を操る、いや、抑えるすべを叩き込んでくれ!」
言い切るとユージーンは両手を突き、頭を机すれすれまで、打ち付けたのではないかと不安になる位深々と下げて来た。
「抑えるすべ、ねぇ」
随分と腰の低い国王だ、これも妹を想う気持ちのなせる業か、とオーサーは妙に新鮮な気分を味わわされる。
「別に教えてあげてもいいけど」
「まことか、オーサー殿!」
「ただし!」
大魔法使いからの色良い返事に、ユージーンはガバッと勢い良く顔を上げて来た。だが、オーサーはまだ浮かれるなと釘を刺す。
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