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それは古い魔道書らしく、一般市民には文字とも解らないかもしれない、難解な文様で埋め尽くされている。それを当たり前の様に、切れ長な目はただ淡々と追い続けていた。
しかし数分もするとその目を擦り始める。どうも太陽の光の反射で、眩しかったらしい。
「やっぱ外で読書はなかったかな」
などと、彼は一見整い過ぎて冷たさも滲ませるような顔に似合わない、軽い口調で独り言を洩らした。
「珍しいな、オーサー。お前が外にいるなんて」
「テリー」
更に、この場にもう一人男性が現れた。
青年――オーサーは彼が近付いているのは気付いていた様で、突然背後から声を掛けられたにも拘わらず、さして驚く事なく応える。
「ま、ね。たまにはお日様浴びとかないと」
「いい心掛けだ」
テリーと呼ばれた男性の方は全身物々しい鎧姿で、のどかなこの場所には何とも不似合いだ。
「それはともかく、まだ軍に復帰する気にならないのか?」
立派な馬からひらりと地面に降り立つと、テリーは被っていた兜を取った。
彼もまたエルフであり、金の髪に瞳、と、同じ一族らしく、オーサーとは非常に似通った姿をしている。
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