飛翔

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挨拶を終えた藤咲雄二は マイクの右側に一歩下がった。 そして新たにマイクの前に、 選手代表として雄介先輩が立った。 雄介先輩は会開催のお礼を述べた後、 『この一週間の合同練習で、 僕達の想いは確信に変わりました。 ここにいる全ての人達の 期待以上の結果を残します。』 全ての人達。 もちろんその中に、藤咲雄二も含まれる。 と言うより、 これは雄介先輩から父親へのメッセージ。 頑張れ、雄介先輩! 頑張れ、巧! 届け! 私からのエール。 会場中が拍手に沸き返る。 会の終了後、会場は関係者でごった返し、 雄介先輩や巧と接触するのは難しく、 私と佳那は一旦ロビーに出た。 その時、別の通用口から藤咲雄二が出て来た。 『君は確か、マネージャーの……』 佳那の姿を捕らえて、 藤咲雄二から声をかけて来た。 『遠藤佳那です。』 佳那が挨拶すると、藤咲雄二が私に目を向けた。 ただでさえ雲の上の人だけど、 目の前にすると尚、 とてつもないオーラを感じる。 雄介先輩に感じる距離感とは、また別物だ。 『お友達ですか?』 『相原香波さんです。 市原巧巳君の幼なじみでもあります。』 そう佳那から紹介され 私はちょこんと頭を下げた。 『幼なじみか。 そういえば、雄介にも幼なじみがいたな。 何かスポーツは?』 そう聞かれ、 『卓球です。』 緊張して、一言がやっとだった。 友達のお父さんなら 初対面でも「おじさん」って呼べるけど、 間違ってもこの人をそんな風には呼べない。いや、確実に「おじさん」ではない。 『じぁあ、真理絵ちゃんの後輩か。 まぁ、頑張りなさい。』 藤咲雄二はそう言い、立ち去ろうとした。 あろうことか、私はそんな彼を呼び止めていた。 『どうして巧なんですか!?』 藤咲雄二が驚きの表情で振り返った。
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