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4月の章
4月5日
朝
―陽・央柳高校―
狗威 陽はここ、央柳高校へ今日から転校して通う事になっていた。
「記憶……、見付かるのかな…」
中途半端に長く癖のある黒髪を掻きながら呟く。
陽は全くといって記憶がなかった。
先月気が付いたら制服姿で公園に居て、央柳高校のパンフレットと転校の文字が書かれた書類を持っていたのでとりあえず予定日である今日に来てみたのだ。
昇降口から入って案内通りに職員室へ行くと、色々な説明を受けて寮に入るらしい事がわかった。
「ありがとう、ございました…」
「気にしなくて大丈夫だよ。すぐには慣れないだろうけど、頑張ってね」
「…は、い」
寮長の人に寮の簡単な説明をしてもらってから礼を述べて教室へ行く。
すると先程職員室で会った人が出てきた。
どうやら担任の先生だったらしい。
「私は森岡 孝弘(モリシマ タカヒロ)、狗威の担任だ。よろしくな」
「よろしく、お願いします」
「それにしてもお前、赤目だなんて珍しい色だな…。」
不意に顔を覗き込んで来た森岡の呟きに「そう、ですか?」と答えつつも教室の方を見る。
「おっと、スマンスマン。私は先に行ってお前を呼ぶから、そこで待っててくれ」
視線に気付いた森岡がそう言い残して教室へ入って行くと、教室のざわつきが一層煩くなった。
(何と無くでここに来たけど、これでいいのだろうか…)
「狗威、入って来い!」
内心呟いていると、中から声をかけられたので扉を開いて教室へ入った。
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