4月の章

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結局、陽は背後からビシバシと感じる視線に堪えながらその日の放課後を迎えた。 寮に向かおうと席を立った瞬間、今まで視線だけ送ってきていた男子が立ち上がり近付いてきた。 (ついにきた……!) 何を言うんだろう、何をするんだろうと無表情ながら内心焦っていると不意に男子はニカッと人好きのする笑顔になった。 「よッス転校生!俺は高橋 大輔って言うんだ。席も近いし、よろしくな?」 「あ、あぁ……よろしく…」 何を言われるかハラハラしていたが、どうやら杞憂だったらしい。 普通に話し掛けてきた高橋にどこか安心しながらもぎこちなく頷く。 ふと、高橋が耳打ちするように顔を近付けてきた。 「ちょっと後で話があるんスけど、いいッスかね?」 「……?」 とりあえず頷いてみると、更に笑みを浮かべた。 「じゃあ、夜中の12時ピッタリに寮の入口で待ってるッス!」 そう言い残して走り去って行った高橋を見送ると、不意に隣の席の緑色を凝視していた女子に服を引かれた。 「…な、に…?」 「………。」 「……?」 問い掛けてみても何も言ってこないので首を傾げると、女子は不意にメモ帳とペンを取り出す。 「……ま、り、も、は…好、き?…まりも?」 書かれた文字を読み上げてから知らない単語に再び首を傾げた。 すると何か信じられないものでも見る目で見られ、次いで緑色の物体が入ったビンを面前に物凄い勢いで突き出される。 『これが、まりも』 同時に突き付けられたメモを見て、「そう、なんだ」と呟いた。 (まりもか……なんか、コレ可愛いかもしれない) 「まりも…初めて見たけど、なんとなく可愛い…ね」 何とは無しに言ってみると、無表情のままガッツポーズをされた。 間髪入れずにメモを見せられる。 『まりもが可愛いって思えるなんて、仲間。』 「私……高峰 鈴。貴方は…今日から、まりも友達ね」 メモの後に淡々と自己紹介をする高峰に思わず頷いた。 「まりも友達かは、わからないけど……似た者同士、なら合ってるかな」 陽の呟きに高峰は何度も頷きながらまりもを机に置いて親指を立てた。 『よろしく』 「うん、よろしく」 陽は初めての友人に思わず笑みが零れた。 (…ちょっと変わった子だけど……。)
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