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―放課後―
あれから色々な説明を受けた陽は、下校時刻を越えて人気のない校舎裏へと来ていた。
不意にスッ…と手を前へ差し出し、空を切る様に滑らせるとそこの景色が歪む。
すかさずそこへ飛び込むと、何か薄い膜を通り抜ける様な感覚の後に今居た場所と殆ど変わらない、しかし何処か違う景色へと出た。
(ただ、なんとなく……。うん、やっぱり此処が俺の居場所だ)
誰に言うでもなく、心の中でそう呟くと一人頷く。次いで傍らに炎を吹き上げた中から真っ白な巨体の相棒…フェンリルが現れた。
『寮、トカイウトコニ行カナクテモイイノ?』
「うん…なんとなく、“あっち”は居づらいから…。」
鼻先を寄せながら問い掛けてきた言葉に薄く笑んで返せばどちらからとも言わずに、まるでそれが日課というかの如くフェンリルはその場に座り込み、それに身体を預ける様にして陽が座った。
フワッフワの体毛に包まれて気持ち良くなりながら空を見上げると、“あちら側”には絶対居ないであろう漆黒で一本足の鳥が悠々と飛び回っている。
「しばらくは、お腹空かない…かな」
『ウン。オ腹イッパイー』
クスクス笑い合ってからじわじわと寄って来る睡魔に身を任せて眠りについた。
夜中の0時を過ぎた頃、突然静かな校舎に轟音が鳴り響く。
「……っ?」
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